総司令官と補佐官

らぶバザ年表2013年。
アメリカのトールオークスで未知の青いガス(Cウイルス)によるバイオハザードが発生。
その死地から首相を保護して脱出した骨喰と鯰尾だったが、双方とも脱出前に現れたハオスとの決戦で重傷を負い、医療機関へと直ちに運び込まれた。
ハオスとの戦闘の最中、鯰尾は骨喰を庇ってハオスの発した高濃度のゾンビ化ガス(Cウイルス)を浴びており、JSAGの病室に運び込まれた際は瀕死の状態となっていた。
集中治療室で、必死に鶴丸が施術をするが、鯰尾の状態は一向に回復しない。鯰尾の身を案じて悩んだ鶴丸は、あるところへ電話をかける。その後鶴丸の呼び出しに応じた小竜が、鶴丸の依頼した道具や薬を携えてJSAGに来訪。それを使って他の施術をするがいずれも効果がなく途方に暮れる鶴丸。
しかし彼は諦めずに、Cウイルスを調べてなんとか出来ないかと、薬研と共に研究していた。
連日連夜治療と研究に明け暮れる鶴丸に追い打ちをかけるように、鯰尾が危篤状態に陥り、鶴丸は必死で鯰尾の治療をするが、鯰尾は自分の死期を悟ったように酷く落ち着いていて、鶴丸に最期の会話をと……静かに話しかける。
鯰尾「……つるまる、さん……もう、いいです……よ」
鶴丸「今は喋るな」
鯰尾「俺、もうわかってますから」
鶴丸「分かってない、まだ間に合う!」
そう言うと、鶴丸は背を向けて薬研の提出したCウイルスに関するレポートを必死に読み漁る。
鯰尾「……負けた負けた…もう、終わりでいいよね」
鶴丸「!」
その言葉を聞いた鶴丸は、振り返って鯰尾の胸倉を乱暴に掴んだ。
鯰尾「っ!?」
鶴丸「ここで捨てるくらいの命なら、俺に寄越せ!」
いつも朗らかに笑っていたJSAGの総司令官が、アワドレンの前で初めてキレた瞬間だった。
鯰尾「……つるまる、さ」
鶴丸「お前の命は預かった……だから絶対に死なせない。どんなことをしてでも、必ず助ける!」
そう言って胸倉から手を離されて、再び横たわる鯰尾の目尻には薄っすらと涙が浮かんでいた。
その後、レポートとアメリカから提出された情報から、Cウイルスの性質を理解した鶴丸は、所持していた別のウイルスを使うことで、Cウイルスの毒を打ち消すことができるのではと推測し、早速鯰尾の身に投与。
その推測が功を奏し、鯰尾の状態がゆっくりと……だが確実に快方に向かっていた。
三日月「のう鶴よ……今回は本当にご苦労であったな」
鶴丸「おいおい、労いの言葉はまだ早いぜ。本当に大変なのはこの後だからな。頭の固い官僚が、使えなくなったとか勝手に決めつけて、排除しようとしているだろう」
三日月「さすが早いな……俺のところにもそういった情報が来ている。現場を知らない者達だから軽々しく言えるのだろう」
鶴丸「……ホントに反吐がでるな」
三日月「さて、如何にして振り切ろうか」
鶴丸「なに、奴さんもじきに何も言えなくなるさ。もう手は打ってあるからな」
三日月「ほう、早いな」
鶴丸「鯰尾の身に出来ていたCウイルスの抗体からワクチンを作り、Cウイルスの恐怖に脅かされている世界各国に配布した」
三日月「なるほどな……これは大きな功績だ」
鶴丸「ああ……これで何も言えなくなるだろう。だが念の為、鯰尾と骨喰は前線から外そうと思う」
三日月「……そうか」
鶴丸「今後鯰尾には、俺の補佐官兼護衛として働いてもらうさ……命を寄越せと言った手前、なるべく、目は離したくないんでな」
三日月「それだけ聞くと一期一振に勘違いされて斬られるのではないかと思うのだが……まあ、気にしないことにしよう。では、骨喰はどうするんだ?」
鶴丸「君に預けよう」
三日月「俺にか?」
鶴丸「ああ。君の任務に、彼はうってつけだろう?」
三日月「ふむ、そうだな……ちょうど護衛となる執事が欲しかったところだ」
鶴丸「はたして、君に護衛が要るのかね〜?」
三日月「それはお前とて同じことだろう」
かくして、骨喰と鯰尾は前線を離れて高官の護衛役となった。
鯰尾「……補佐官って言っても、俺何をすればいいんですか?」
鶴丸「そういうことは完全に復帰してから考えてくれ」
鯰尾「……ああ、回復したら鶴丸さんにコキ使われるんですね。焼きそばパン買いに行ったり、書類のコピーを取ったり、さも鶴丸さんの従者のように扱われてしまうんですね!?」
鶴丸「それは従者というより、パシリとか秘書だな……なに、こういうことも重要なことさ。それに俺の敵は、バイオテロ以外がメインなもんでね。そういう輩から、俺を守ってくれればいいさ」
鯰尾「バイオテロ以外にも敵がいるんですか?」
鶴丸「ああ、俺にとって一番の敵は……同国の人間さ」
鯰尾「別組織といえど、志は同じなのではないんですか?」
鶴丸「ああ、表向きはな。でも、そんな奴らに裏で命を狙われることだってある。特に警察庁が、俺たちを傘下組織として取り入れたがってる……あの手の連中は俺や一期一振を失墜させることばかり考えてるのさ……全くもってタチが悪い」
鯰尾「警察が……」
鶴丸「警察だけじゃない……内部にもJSAGの敵はいっぱいいるんだ。それもB・O・Wと違い、奴らは狡猾で傲慢だ……そんなわけで、そんな奴等から俺を守ってくれ。雇われた刺客が奇襲によく来るからな」
鯰尾「え、そんな来るんですか」
鶴丸「ああ……でも君がいれば抑止力になる」
鯰尾「……」
鶴丸「そんなわけで、俺の護衛をしてくれる君に、これを渡しておこう(鯰尾に帽子を被せる)」
鯰尾「?……な、なんです、これは」
鶴丸「君の発電量を抑える特別製の帽子だ。うん、なかなか似合ってるぞ」
鯰尾「どこで作ってもらったんですか、これ」
鶴丸「なーに、小竜に依頼してな」
鯰尾「こんなものまで作れるんですね」
鶴丸「基本なんでもやってくれるからな、あいつは……いつも相場より高い気がするが……まあ、その話は置いといて……これからよろしくな、鯰尾」
鯰尾「はい、よろしくお願いします、鶴丸さん!」

END.