至高天のもとに集う四大天使

らぶバザ伊達組が天使になった経緯です。
プロットだけシナリオ担当からいただいて、演出担当と頑張って文章を起こしました。
後でまた見直します(;^ω^)

らぶバザ年表2000年。
生まれつき染色体(テロメア)に異常を抱えており、余命があと1年と宣告された太鼓鐘。そんな従兄弟を救おうと治療法を模索していた物吉のもとに、懇意にしていた王族関係者から先進医療の話を持ちかけられる。彼が紹介した医学者から治療方法を聞いた物吉は、かつて貞宗家のかかりつけ医であった鶴丸に相談する。
話を聞いた鶴丸は「なるほどな、その手があったか。全身の細胞入れ替え……理論上は可能だし、手術が成功すれば命は助かるだろう。だが、それで生き残ったとしても、記憶や人格が貞坊じゃなくなっているかもしれない。そのリスクを承知で、貞坊が手術を受けるだろうか?」と懸念を示したが、熟考の末に物吉は手術を受けることを提案。話を聞いた太鼓鐘は当初は戸惑いつつも手術を受けることを決め、AWT系列の病院に入院する。
※この時一緒に話を聞いていた日向も別の難病を患っており、太鼓鐘と同じ施設で治療を受けることになったが、数ヶ月くらい別の施設で精密検査を受けてからーと虚偽の説明を受けていた

一方その頃、鶴丸は追手から逃れる為にフランスからイタリアへと渡っていた。彼はAWTフランス支社の研究員兼支社長であり、アワドレン(鎬藤四郎)の管理を任されていた。早急な成果を求める本社から「規定以上のウイルスを投与せよ」と指示を受けたが「彼等だって生きているんだぞ。ウイルスへの抗体が高いとはいえ、事は慎重に進めるべきだ」と反対。その結果、本社は組織的な見せしめとして鎬藤四郎を引き上げると、フランス支社をガス管の爆発事故に見せかけて一掃した。咄嗟に冷凍庫に入って火の海から逃れた鶴丸だったが、そこに残っていた痕跡から彼が焼死していない(=生存をしている)ことを知った本社は、欧州に私設兵を派遣した。
そして鶴丸はフランスとイタリアの国境付近であるモンブランで、星辰体の終世一振と遭遇する。
『お前はフランス支社の鶴丸国永か』
「そういう君は天下一振の分割体にして一期一振の半身、終世一振か……驚いたぜ、そんな姿(星辰体)になって動いているとはな」
と対面してすぐに互いの素性を看過する二人。
『ちょうどよかった。見たところ、お前なら短時間とはいえ器になれそうだ』と終世は鶴丸に迫る。しかし、唐突に現れた闖入者(追手)の奇襲により、鶴丸はクレパスへと滑落してしまう。終世は念力で雪を鋭利な投擲武器へと変えて部隊を一掃し雪崩を引き起こすと、戦慄して立ち竦んでいた残党兵に催眠術を施して虚偽報告と退去を命じた。
そしてクレパスに落下した鶴丸のもとへ急ぐ終世。
「……よう、さっきぶりだな」
『酷い有様だな……フランスの支社長。お前たちAWTが私の弟たちにしてきた処遇に比べれば、優しい最期かもしれない。だが、お前にはやってもらわなければならないことがある。話す時間が惜しい……勝手に使わせてもらおう』
そうして終世が憑依した瞬間、記憶を共有した二人は互いが敵ではないことを認識する。
「生き永らえる為に、適した器を探していたのか。だが、すまないな。察しの通り、俺はもうじき死ぬ」
『念力で出血は抑えられるし、裂けた部分はくっつけられる。星辰体の私はこれ以上外には出られない。だが、お前とならまだ生きられる。私はここで諦めるわけにはいかない』
「なるほど、お互い後がないわけだ。いいぜ……乗りかかった舟だ、君に付き合おう。その方が面白そうだ」
二心同体となった二人は、そのままクレパスの中を歩き続け、やがて広い空間へとたどり着く。どこか登れるところはないか?と辺りを見回す鶴丸を余所に、何かを感知した終世が厚い氷塊の中で眠っていた種子を念力で取り出した。
「それは……植物の種子か?」
『ああ、そのようだ……ゼノオリクトに似た波長を感じる。これなら核として代用可能かもしれない……この種子と私の残滓細胞をもとに入れ物を造ってくれ』
「そんな得体の知れないものを使って身体を造れと言われても困るぜ」
『なんだ、ずっと私と同棲していたいのか?』
「その誤解を招くような物言いはやめてくれ」
『何がおかしい。一緒に住むことをそう言うのだろう?』
「恋人同士が一緒に住むことをそう言うんだ」
『……』
「俺たちの場合は同居という表現が正しい」
『……』
「……」
『……お前の記憶を消し去ってやりたいが、余計なことして力を削ぐと、裂けた皮膚からまた血が出る。今のは聞かなかったことにしてくれ』
「ああ……それと君と一時の同居は面白そうだが、さすがにずっとは勘弁してくれ。先程言った通り、ゼノオリクトと類似しているようだが、得体の知れないものであることには変わりはない。山奥に隠れ家があるから、そこで詳しく調べてみよう」

「これはすごい……大発見だ。君が言っていた通り、ゼノオリクトと数値がほぼ同じだ。こいつも君たちと同じように太古の昔に隕石と共に地球にやってきたんだろうな。これなら確かに核の役割を果たせるかもしれないが、君の細胞でクローンを作っても、器はもたないと思うぞ。アワドレンのクローンは、他社でも事例があるが、どの子も長生きしていない」
『その問題は、後で対処すればいい……とにかく今は一刻も早く身体が欲しい』
「分かった、なるべく急ぐ…………その代わり、後で俺の頼みを聞いてくれ」
寝食を惜しんでようやく終世の身体を造った鶴丸は、安堵の表情を浮かべて床に倒れ込んだ。水槽から出た終世は、鶴丸の上体を抱き起こして、ようやく彼が末期の状態だったことを知る。鶴丸は先の滑落事故で負った傷が原因で、敗血症を患っていた。
「ははは、同じ身体を使っていても、感覚を全て共有しているわけじゃ、ないんだな。おかげさまで、仕事に専念することができたぜ」
『こんなになるまで……どうして言わなかった?』
「わずかだが、贖罪の機会を与えてくれたこと、感謝するぜ。元AWTの俺には、まだ……生易しいかも、しれないが、そこそこ相応しい最期、だろ?」
息も絶え絶えに、鶴丸は言葉を紡ぎ続ける。
「……身体の調子は、どうだ?」
『悪くない……相性がいいのかよく馴染んでいる。お前は優秀な研究者だ』
「ははは、そうだろう?……AWTは惜しい人材を失くしたな、いい気味だ」
『…………どうしてAWTに?』
「世界屈指のテクノロジーを持つAWTなら、不老不死になれるんじゃないかと思ってな。愚かだと、罵ってくれて構わないぜ……俺は自分の為に君の兄弟を殺してきたようなもんだ」
『憑依した時に記憶を見たから分かる。弟(鎬)は……お前たちのもとで幸せに過ごしていた』
「それは、俺の視点での記憶だろう?……君の弟が、本当は、どう思っていたのかは、分からない」
『いや、鎬は本当に幸せそうだった。人間に使われても、お前たちの平穏を守れるなら、それでいいと思っていた』
「弟たちを、よく見ていた兄(君)が、そう言う、なら……そうなんだな」
『鶴丸国永……頼みがあると私に言っていたが、何をすればいい?』
「そこの冷凍庫に入っている薬を、英国にいる家族のもとに届けてくれ」
『……他でもない親友(お前)の頼みだが、それは聞いてやれない』
「…………」
『お前が直接手渡しに行け。その為の協力なら私も惜しまない』
「てきびしい、な。死体に鞭を打ってでも、動け、と?」
『私にそんな趣味はないし、お前をこのまま物言わぬ屍にするつもりはない。もし助かる可能性があるとしたら、お前はどうする?』
「……どういう、ことだ?」
『お前のおかげで、私は新たに別の力を得た』
「!?」
『それを使えば、お前は助かるかもしれない。成功する確率は低いし……もし助かっても、お前は人間ではなくなるだろう。それでも、いいか?』
「…………くっ」
くつくつと静かに笑う鶴丸に、終世は驚いて見開く。
「いいじゃないか! ひとならざる者になる……か。これこそが本当に相応しい俺の末路だ……やってくれ」
神からの洗礼を受ける信者のように、終世の提案を快諾した鶴丸。彼の口元に、手首を傷つけた終世の血が滴り落ちた。
至高天の施し(Dウイルス)を与えられ、天使ラファエルが誕生した瞬間である。

「みっちゃんも伽羅も近々国家資格の受験があるんだから、勉強に集中してくれ。週1で見舞いに来てくれればいいからさ」と太鼓鐘から入院中の付き添いを断られた燭台切と伽羅は、週2で見舞いに訪れていた。
手術の回数が増えていくうちに太鼓鐘は従兄弟(物吉・亀甲)や親友(日向)の名前を忘れていき、忘れないようにと持参していたアルバムや楽譜を破ったり、「こんなところに来てないで、勉強しろよ!」と怒号をあげて暴れたり、普段の彼からは想像もできないほどまでに錯乱を引き起こしてしまう。やがて何事にも無反応になっていったが、燭台切と伽羅の必死の呼びかけに反応して一瞬正気を取り戻した彼は「助けてくれ、ここにいたら俺が俺でなくなる!?」と二人に懇願する。
日を増すごとに異常な言動をするようになっていった太鼓鐘を目にし、AWTや物吉に対して疑念を抱いていた二人は、太鼓鐘を退院させようとする。しかし、そのやりとりを監視していたAWTに捕らえられ、燭台切と伽羅は生物実験の被験体として別の施設に送られる。
半年後、施設の実験で見るも無惨な姿になっていた二人のもとに、鶴丸と終世が訪れた。事情を聞いた鶴丸は「分かった、貞坊を助けに行こう。だが、その前に……まずは光坊と伽羅坊が先だな。ひとならざるものになっても、生きていく覚悟はあるかい?」と尋ねる。「貞ちゃん(貞)を救えるなら、たとえひとでなくなっても構わない」という二人の覚悟を聞いた彼は終世の血を飲ませて燭台切を天使ミカエルに、伽羅を天使ウリエルにした。
しばしの休息の後、長い捜索の末にようやく太鼓鐘を発見する。記憶のない太鼓鐘は、彼等を敵と断定して攻撃するも、爆風から自分を庇ってくれた燭台切の姿を見て記憶が戻る。その後気絶している間に終世の血を与えられた太鼓鐘は天使ガブリエルとなった。

終わり